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Date with mistress Megumi
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「公くん! 今行くわ!!」
それでも追いかけようとした詩織ちゃんを、公くんの鋭い声が止めました。
「やめろ、詩織!」
「公くん!」
「みんなを連れて逃げてくれ!!」
「で、でも……」
「頼む!」
二人は、一瞬見つめ合いました。そして、詩織ちゃんはこくりと頷きました。
「うん。でも、きっと、ううん、絶対に助けに行くから!」
公くんはにこっと笑い、そしてUFOに吸い込まれていきました。
次の瞬間、UFOは急に高度を上げ、そして空のかなたに消えていきました。
詩織ちゃんは、唇を噛んでそれを見送っていました。
「公くん……絶対に助けるから……。絶対に!!」
めぐみちゃんとでぇと カーテンコール
第拾話 「う、宇宙船?」
シュン
ホテルの自動ドアが開いて、詩織ちゃんが戻ってきました。
ロビーでおしゃべりしながら待っていためぐみちゃんと見晴ちゃんは、それに気が付いて駆け寄ります。
「お帰り、詩織ちゃん」
「あれぇ? ゆかりちゃんに、如月部長……っと、元部長でした。どうしてここに?」
見晴ちゃんは、詩織ちゃんの後ろにいる二人を見て、目を丸くしました。ちなみに、在学中見晴ちゃんは文芸部の幽霊部員だったんですよね。
「これは、美樹原さんと館林さんではありませんか。このようなところでお逢いするとは奇遇ですね」
ゆかりちゃんはにこっと笑ってお辞儀しました。
めぐみちゃんは、詩織ちゃんの様子がいつもと違うのに気づいて訊ねました。
「詩織ちゃん、どうかしたの?」
「メグ……、実は、公くんが……」
「主人さん? 主人さんがどうかしたの!?」
「とにかくさ、全員集めて言った方がいいっしょ?」
詩織ちゃんの後ろから、夕子ちゃんが顔を出しました。その意見に詩織ちゃんは頷きます。
「そうね」
ただならぬ様子に、めぐみちゃんと見晴ちゃんは頷きあって、フロントに駆け寄ります。フロントの人に、お部屋に戻ったみんなを呼びだしてもらおうというわけですね。
「ごめんごめん。シャワー浴びてたから、最初呼び出しに気がつかなくってさ……」
エレベーターから飛び出してきた望ちゃんは、ロビーの隅に集まっている一同に駆け寄ってきました。そして、快活に訊ねます。
「で、なんなんだい? 今からまた温泉に行くのかい?」
「そんなんじゃないの」
ソファに浅く腰を下ろした詩織ちゃんの沈みきった口調に、望ちゃんは眉をひそめました。
「なにがあったんだい、藤崎さん?」
「実は……、実はね、公くんが……」
そこまで言って、こらえかねたように泣き出してしまう詩織ちゃん。
その詩織ちゃんの肩に手を置くと、未緒ちゃんが静かに告げました。
「主人さんが、UFOにさらわれてしまったんです」
「?」
思わずみんな顔を見合わせました。代表して、彩子ちゃんが聞き返します。
「イッツジョーク、冗談でしょ?」
「いいえ、本当の事なのですよ」
ゆかりちゃんがのんびりと答えます。でも、いつもなら細めている目を大きくあけていることに、めぐみちゃんは気づいていました。
(嘘じゃ……ないのね)
ガタン
椅子が倒れる音がしました。みんな一斉にそっちに視線を向けます。
見晴ちゃんが立ち上がっていました。真っ青になって、口に手を当てています。
「ま、まさかそんな……」
「見晴ちゃん?」
「見晴、どうしたん?」
めぐみちゃんと夕子ちゃんが声をかけましたが、見晴ちゃんは二人の声も耳に入らないって感じで、立ちつくしています。
「館林さん。何か、ご存じなのですか?」
未緒ちゃんが訊ねました。その声にやっと我に返った見晴ちゃん、いやいやをするように首を振りました。
「し、知らない。知らないよぉ!」
「見晴ちゃん……」
「私、知らないわよぉ!」
そう叫ぶや、見晴ちゃんは走ってロビーを飛び出していきました。
「ちょ、ちょっと待ちぃな!!」
素早く夕子ちゃんが見晴ちゃんを追いかけます。
彩子ちゃんはそれを見送ってから、視線を戻します。
「見晴のことは、夕子に任せるとして……。ワッツハペン、何があったのか、詳しく聞かせてくれないかな……、未緒」
一瞬詩織ちゃんを見ましたが、泣き伏している詩織ちゃんに説明は無理そうだと判断した彩子ちゃん、未緒ちゃんに訊ねます。
未緒ちゃんは頷きました。
「わかりました。実は、私と古式さんで、主人さんをお誘いして、ゆけむり温泉の早咲きの桜を見に来たのですが……」
(どうして!? どうして公さんが!?)
見晴ちゃんは心の中で叫びながら、ホテルの前の道に飛び出しました。
でも、左右を見ないで道に飛び出すと、危ないですよね。
パパーッ
「え? きゃぁー!」
かなりのスピードで走ってきた自動車が、クラクションを鳴らしました。見晴ちゃんははっとそっちを見て悲鳴を上げます。
追いかけてきた夕子ちゃんも、思わず声を上げました。
「見晴ぅ!!」
グワッシャァン
ものすごい音がしました。そして、静かになります。
「あ、あれ?」
思わずその場にしゃがみ込んでいた見晴ちゃん、何事もないのに気づいて、薄く目をあけました。
「まったく。変な事をさせるんじゃないわよ」
「え?」
聞き覚えのあるその声に、おそるおそる顔を上げる見晴ちゃん。
その目の前に、黒い巨大な金属でできた“足”があります。さらに視線をあげると、それが巨大なロボットであることがわかります。
「これは……」
「結奈のロボットじゃん!」
ホテルの玄関前からそれを見ていた夕子が声を上げます。
いつものように真・世界征服ロボの肩に乗っていた結奈さんは、ロボに命令しました。
「ロボ、その車、その辺りに放り出しなさい」
おや、よく見ると、ロボの右手に掴まれているのは、さっき見晴ちゃんにぶつかりそうになった自動車ですね。
どうやらぶつかる寸前に、ロボが自動車を掴みあげたようです。
「イエス、マスター」
そう答えると、ロボは車をその場に置きました。
「ひえぇぇぇ!」
そのまま急発進すると、車は走り去っていきました。よほど怖かったんでしょう。
結奈さんはそのまま、思わずその場にぺたんと座り込んだ見晴ちゃんに視線を向けました。
「迎えに来たわよ、館林見晴。いえ、もう一つの名前で呼んだ方がよかったかしら?」
「!」
思わず目を丸くして、見晴ちゃんは結奈さんを見つめます。
「な、何のこと?」
「いいから、来なさい」
結奈さんがそう言うと同時に、ロボが見晴ちゃんの前に手のひらを下ろします。
「貴女のお姉さんに言われて、迎えに来たのよ」
「晴海姉ぇに?」
聞き返す見晴ちゃんに、結奈さんは頷きました。そして、ぽいっと何かを放ります。
見晴ちゃんはそれを受け止めました。
「これは!」
「ナニナニ? 何なのそれ?」
いつの間にか見晴ちゃんの後ろから、夕子ちゃんがのぞき込んでいました。
それは、一見、何の変哲もないペンダントに見えます。
見晴ちゃんは、ぎゅっとそのペンダントを握りしめました。
「タコ、ううん、夕子ちゃん」
「な、なによ、超ブッキーじゃん」
「ごめんね……。さよならっ!」
そう言うと、見晴ちゃんはロボの手の上に駆け上がりました。そして叫びます。
「紐緒さん、早く行って!!」
「私に命令しないでほしいわね。ま、いいわ。ロボ!」
ゴォーッ
ロボの背中に装備されたスラスターから熱風が吹き出します。
「み、見晴! ちょい待ちぃ! 何なのよいったい!?」
すさまじい熱風の中、片手で髪を押さえながら、夕子ちゃんは叫びました。
見晴ちゃんは、ロボの手のひらの上で顔を伏せたまま、何も答えません。
「超むかぁ! 待てって言ってるっしょ!! ちょい結奈! 止めなさいよっ!」
上昇を始めた真・世界征服ロボに向かって叫ぶ夕子ちゃん。でも、結奈さんは聞く耳も持ってないようで、夕子ちゃんの方を一顧だにしません。
「そっちがその気なら、こっちも考えあるモンね!」
そう叫ぶや、夕子ちゃんはそのまま駆け寄ります。
「あたしのこの手が光ってうなる! 見晴を追えと轟き叫ぶぅ!! ばぁくねぇつ、
ゴッド・ナァイトパレェェェェェドォォォ!!」
夕子ちゃんの左手が真っ赤に燃え上がります。
「いっけぇぇぇ!!」
そのまま、夕子ちゃんは左手を突き出します。その手から放たれた光が、巨大な手になって、真・世界征服ロボの左足を掴みます。
「な!?」
ぐらりと傾ぐロボの肩の上で、一瞬絶句する結奈さん。
「ヒーーート・エーーーーーンドォォ!!!」
ぐしゃぁぁっ
夕子ちゃんの叫びと共に、ロボの左足はそのまま握りつぶされました。
「ちぃぃ。朝日奈夕子、この代償は高く付くわよ!!」
結奈さんの叫びと共に、真・世界征服ロボはどんどん上昇していき、やがて一瞬きらめいたかと思うと、姿を消しました。
夕子ちゃんは、Vサインを出しました。
「流派、東方不敗は王者の風よぉってね。でも、なんか忘れてたみたいな……」
そう呟いてから、夕子ちゃんは頭を抱えました。
「ああーっ、違う!! 見晴を止めるんだったのにぃぃ! あたしって、超おばかぁぁぁ!」
どうやら最初の目的をすっかり忘れてたみたいですね。
「どうも、お邪魔しました」
鏡家の玄関で、レイさんは頭を下げました。
見送りに出ていた魅羅さんはにこっと笑いました。
「いいえ。少しはお役に立てたかしら?」
「それはもう」
レイさんもにこっと笑いました。それから、真面目な顔に戻ります。
「あの、さっきの話ですけれど、もしよろしければ……」
「そうね。お願いするわ」
そう言って、魅羅さんは微笑みました。
「浅ましいって思われるでしょうけど、私にはあの子達がいるから……」
「別に、私も恵んで差し上げるつもりはありませんもの。私にできることは、チャンスを差し上げることだけ。そのチャンスを掴み取れるかどうかは、貴女次第ですわ」
「わかってますわ」
二人は握手しました。それから、レイさんは魅羅さんの後ろに手を振ります。
「それじゃね。今度はお土産持ってくるわね」
「ありがとー、おねーちゃん」
魅羅さんの6人の弟達は、声を揃えて言いました。レイさんはにこっと笑うと、
もう一度深々と頭を下げ、そして出ていきました。
魅羅さんは、その後ろ姿を見送ってから、弟たちの方に振り返ります。
「さぁ、みんな。それじゃ夕御飯にしましょう」
「わぁーい」
歓声を上げる弟たちを見回して、魅羅さんは笑いながら台所に向かうのでした。
その頃、ロビーでは未緒ちゃんの説明が終わったところでした。
「私やゆかりさんでは止めることができませんでした。主人さんは、そのままUFOにさらわれてしまったんです」
「主人くん……」
沙希ちゃんが両手を組んで窓の外を見上げました。
「無事でいるよね、主人くん」
「優美、助けにいくよ!」
優美ちゃんがぴょんと立ち上がって叫びました。
望ちゃんがその頭にポンと手をのせます。
「あたし達だってそうしたいさ。でも、何処にいるかわからないんだぜ」
「そうだ、紐緒さんならわかるんじゃないかな?」
沙希ちゃんが振り返りました。
「だめだめ。結奈はどっか行っちゃったよ」
そう言いながら、夕子ちゃんがホテルに戻ってきました。
「どういうこと?」
聞き返す沙希ちゃんに、夕子ちゃんはさっきの顛末を説明しました。
「……ってわけで、見晴は結奈が連れて行っちゃったんよ。でも、結奈のやつ、見晴に姉さんが呼んでるとか言ってたよなぁ。まさか、きらめき市までもどったんかな?」
「違うよぉ。優美、先生とみーちゃんと一緒にここに来たんだもん」
と、優美ちゃん。
「そっかぁ。でも、今何処にいるかわかんないもんね」
「あ、あの……」
泣き伏す詩織ちゃんの肩をあやすように叩いていためぐみちゃんが、ふと思いついたように顔を上げました。
「伊集院さんに相談するっていうのは、どうでしょうか?」
「あ、その手もあるよな。あいつのところなら、結奈より……」
頷きかけた望ちゃんを、ゆかりちゃんが引っ張りました。
「伊集院さんは、今は隕石のことでお忙しいのではないかと思いますが」
「隕石?」
「こ、古式さん!」
未緒ちゃんが思わず声を上げます。
ゆかりちゃんはほっぺたに手を当てました。
「あら、思わず言ってしまいました」
「……」
未緒ちゃんはため息を付きました。そして、みんなの方に向き直ります。
「説明しますね」
その頃、伊集院家地下の特設司令室は大騒ぎになっていました。
そこに、ドアが開いてレイさんが入ってきます。
「あ、レ、レイさま!」
外井さんが駆け寄ってきます。たくましい男の人を前にしたとき以外滅多にうろたえることがない外井さんですが、このときは妙に慌てています。
「どうしたのですか、外井? それに、この騒ぎは一体何なのです?」
「それが、例の隕石が……」
「隕石が?」
「ご、ご覧下さい」
言われて、レイさんはスクリーンに目をやって、絶句しました。
「隕石が、砕けている? どこかの国が攻撃したのですか?」
「いえ、そうではなく、実はあの隕石は二重構造になっていたようなのです」
「二重構造? どういうことなのです?」
「はい。そして、外側にあたる部分が砕けているようです」
「隕石から金属反応!」
オペレーターの声があがりました。次いで、その声が驚愕に満ちます。
「こ、これは!! なんなんだ!?」
「報告は的確に!」
外井さんが叫びます。
「は、はい。すみません。隕石は、すべて金属でできているようです!」
「全て金属!?」
思わず、レイさんは眉をひそめました。そして、はっと気づきます。
「ま、まさか、あの隕石が人工物だっていうの?」
「レイさま、あれを!」
スクリーンを指さす外井さん。
司令室の巨大なスクリーンには、今やその姿を現した、巨大な金属製のラグビーボールが映し出されていたのです。その対称的な形は、どう見ても自然の物体とは思えません。
「う、宇宙船?」
「まさか」
私語を禁じられているはずのオペレーター同士が、興奮した口調で囁きあっています。
レイさんは、ゆっくりと椅子に座りました。
「それで、あの異常な加速やミサイルを砕いた歪震波の説明は付きますね。しかし……」
ゆけむり温泉郷では、未緒ちゃんが隕石の話をみんなにしたところでした。
「隕石とUFO、関係があるのかしら?」
彩子ちゃんは額を押さえて考え込みました。
と、不意に詩織ちゃんが、伏せていた顔を上げました。
めぐみちゃんが、ハンカチを差し出します。
「詩織ちゃん、使って……」
「ありがと、メグ」
そう答えてハンカチで顔を拭うと、詩織ちゃんは夕子ちゃんに訊ねました。
「朝日奈さん、伊集院さんの電話番号知ってる?」
「うん、知ってるけど」
「詩織ちゃん……」
心配そうに詩織ちゃんを見るめぐみちゃんに、にこっと笑って詩織ちゃんは答えました。
「大丈夫よ、メグ。私、もう泣かないわ。公くんを助けるまで!」
そして、拳をぎゅっと握って、詩織ちゃんは窓の外を見つめました。そして、自分に言い聞かせるように繰り返します。
「絶対に、助ける! 私の大切な人だもの!」
《続く》

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